| オマケのオマケ |
| うちの店長ははっきし言ってサディストだ。 いつも新作開発と銘打って、やばげな組み合せのヤキソバをオレらに試食させる。 まずければまずい程、それを見た時の店長の顔は輝いている。 でも「まずいです」って言うとみるみる機嫌が悪くなる。 店長は顔がぶっちゃげ893なので、バイトの頃に怖さのあまり「ちょううめー(泣)」と言ってしまって パイナップルピューレの掛かったヤキソバがメニューに加えられそうになった事があった。 ちなみに「まずいです」の係はオレ含む従業員4人でジャンケンして決める。 今週も容赦なく、地獄系試作品評会はやってきた。 実に不運な事に、オレ以外の面子はこの日、有給消化しているか配達に回っているかだった。 つーかヤキソバ緑なんスけど店長! オレはいつもに増して迷った。 893と勝負するか、ミラクルなヤキソバと勝負するか。 新作とにらみ合いする内に時間はどんどん過ぎていく。 店長の視線は鈍器から日本刀ぐらいまで研ぎ澄まされて行き、ヤキソバの味もファンタジー寄りになって行く。 もはや一刻の猶予も許されない。 そこへやってきた梶尾が、オレには救世主に見えた。 「で。あいつら元気なわけ。」 新作の試食という店長の好意を断った手前、オレは必要以上に懸命に梶尾のヤキソバを焼いた。 ヘラの擦れ合う音で無駄にリズムを刻んだりして、これまた無駄に頑張ってますアピール。 梶尾がオレの手元をじーっと見てくるから、余計に気合も入る。 梶尾の話は、つい最近までオレの日常だったはずなのに、少しだけ遠くに感じた。 (ハーおんだあいてーなー) とか思って上の空になっていたら、少しヤキソバを焦がしてしまった。 ちょっと悪いなと思ったのでおわびに彼女のここ一番これ最高って写メールを見せてあげようとしたら、即断られた。 梶尾、かわいくねえ…。 オレは食い逃げも許さない。食った分の金もしっかり頂いた。 だけど、場合によっては一口餃子付きBセットぐらいなら、893の目を盗んでのタダで出してやることだってできる。 「恩田つれてきて。」 「ヤガミさんもさあ、じゅうぶんバカだよね。」 つーか1秒で終わらせんなよ梶尾。 何だそれ何だそれ何だそれ… ポカーンとしたまま梶尾の背中を見送った。 梶尾。かっわっいっくっねェーーーなあァーー!! ほぞを噛んでいると、丸めた競馬新聞で893に殴られた。 「オラ矢神、笑ってねェで仕事しろィ!」 「……。」 …梶尾、櫻井もつれてきていーからまた来いよ。 そう言うのを忘れている事にオレが気がついたのは、次の週の試食会の時だった。 |
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