| 愛されたがりにつき。 |
| 「俺、春香のこと大好き!愛してる!!」 こういうところに時折、無性に腹が立つ。 俺は本当にこいつのことが好きなので、腹が立って仕方ない。 * * * いつもの見知った顔ぶれと別れた後、暗い夜道を二人そぞろ歩く。 素面のときならば質感を感じ取れるはずのコンクリ特有の硬ささえも、酔いの所為か足先からは伝わってこない。 まるきり地面の存在を感じ取れない。 これが雲の上を歩いてるような感じって言うのかな…。 足先の不確かに、さすがにこれは飲み過ぎたんだなと思う。 なんだっけ。 アルコールを蒸発させるには確かオレンジやグレープフルーツなんかの柑橘系のジュースがよかったはず…。 などと、酔った頭で真面目に考え出すという酔い加減の鈴木の横で、鼻歌を歌っていたはずの小野塚が唐突に喋り出す。 酒気を帯びた火照った顔で、上機嫌にぽろりぽろりと。 「やっぱ五十風ってかっこいーよなぁ…もう恋の奴隷になってもいいって感じ?」 にへら、と微笑む。 「でもいっつも八乙女と飲んでばっかでさぁ…なんで俺は誘ってくれないんだろ。 でも八乙女も好きだからいいんだけど。五十風と一緒にいるの見るとトキメクんだよなぁ」 ほろりと肩を竦めた次の瞬間には、でもやっぱりと嬉しそうな顔をする。 やっぱ病気か…多少憐れむような心持ちだ。 でも。 大好き。 愛してる。 聞き慣れ過ぎた。 少し疲れた。 誰にでも好きって言ったり、抱きついたり。 好きな気持ちは解るけど、自分がこいつの恋人だったら結構キツイ。 そういう感情をストレートに表せるのが小野塚の長所なんだろう、と思う。 「………」 けれど猛烈に腹が立つ。 自分がこいつの一番でないことが、解り過ぎるくらいに判っているので。 きっと俺はいつまで経っても、いつまで傍にいても…一番にはなれないだろう。 ふらふらと歩く小野塚の数歩後ろを歩く。 話を聞いている振りをしながら。 …今だけは、顔を見られたくないから。 |
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