少年の詩

昔からヒロトとマーシーにあこがれてた。

家に帰ったらただいまも言わずに、自分の部屋に駆け込む。
妹と共有の子供部屋は、カーテンで一つの部屋を二つにして仕切っている。
自分の側にある押入れを力任せに開いて、奥を覗き込む。
衣替えで仕舞ったばかりの冬服の入った箱を乱暴に引っ張り出して、そのまた奥にある妹の雛人形を横にずらしながら、押入れの一番奥まで頭をつっこんだ。
押入れの中はほこりっぽくて、咽が気持ち悪かったが、そんなことは気にもならない。
ほこりっぽい押入れの奥には、すっかりほこりをかぶって放っておかれた教則本とギター。

コンポの横に積まれたCDを、今日までは一人で聞いてたけど。
ギターを練習して一緒に弾く相手はいなかったけど。

ヒロトとマーシーにはなれなくても、ヒロトとマーシーになりたいって言える相手を見つけた。



 >>>ひみつ   -- 06/05/04-03:10..No.[160]  
   


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