いつも駅へ向かう道を朝7時50分頃自転車ですっ飛ばして来る高校生がいるの。 ちょっと髪が長めで、そうね、無口そうだけど、育ちが良さそうな雰囲気があるわ。 別にジロジロその子を眺めてるわけじゃない。 逆なの。勘違いしないで。 確かに私も20代後半気味で、家事見習いって言うか、ちょっとフリーターっていうか、でも人生別にあせってないから。男がいなくちゃ駄目って事ないでしょ。彼氏がないのなんて、私だけじゃない。ヨッコもいないし、美紀にだっていないし、ネコにだっていないわ。でもみんな問題なく、人生楽しんじゃってる。 ただ、なんていうの? 好かれるのって嫌いじゃないし。ねえ。だって女だもん。 どうせバイト先で制服に着替えるんだから、何着てったっていいの。 その日は、白のワンピで、ちょっとお嬢様風にまとめてみた。長い髪を掻き揚げて玄関の下駄箱の鏡に自分を映すと中々で気分の良いスタートって感じ。おはよう、私。 バイト先到着5分遅刻の寝坊だったけどね。 それで駅に向かって歩いてたら、向こうからマウンテンバイク?とか言うの? ちょっとゴツい自転車…、あれ、不思議なんだけど、ペダルのとこ、足入れるの大変じゃない? すぐ足つけなさそう。 あと、なんで鍵つけないのかしらね。 ママチャリみたいな鍵、あると便利なのに。 よくわかんないけど、それに乗った高校生が歩道爆走してきて、ヤバいって思ったの。 あんなゴツいのに轢かれたく無いし。 とにかく、電信柱の陰に隠れるように立って、やり過ごそうとしたの。 そしたら、その高校生、通り過ぎ際、私に気が付いて「うわっ」って自転車のペダルから足を外した挙句、よろけてガードレールにぶつかって、コケてて、散々。あーもー、かわいそーって感じ。 ここはお姉さんの登場じゃない? 「だいじょうぶ?」って声をかけたら、「あー……」ってちょっと間延びした返事して、私の顔じーっと見るわけ。あ、一目ぼれされちゃったなってすぐわかった。 でもいきなり告られても困るじゃない。私、そんな安っぽい女じゃないし。 若すぎーって気もするし。友達に紹介する時、ちょっとね。 だから「バイト遅刻しちゃう」って、急いでその場を離れたの。 でもでも、考えてみたら、うんと年下の子と付き合うって普通出来ないっぽいじゃない?付き合ってあげるって感じして「わるくないかなあ」ってバイト先で考えてて、ポテト油からあげる時間忘れて一カゴ焦がしちゃった。 店長が見てなかったから捨てておしまい。 隠せた失敗って失敗じゃないよね。 それで、次の日からその子に告らせる…じゃなくて、告るタイミングっていうか、そういうのあげようと思って、7時50分頃、出会いの電信柱の辺りに居るようにすることにしたの。 それだとちょっとバイト遅刻しちゃうけど、早朝シフトに連チャンで入ってあげるんだし、店長だってラッキーってもんじゃん。 恋と仕事の両立。なんかキャリアっぽー。江角! 毎朝、会うたび、その子、私を見て、驚いたようななんともいえない顔するんだけど、自転車を止めて話しかける勇気がでないみたいなのね。 しかも照れるんだかなんなんだか、登校時間を微妙ずらしてる気がするの。 そしたら照れないで済むかも知れないけど私に会えなくなっちゃうんだよ? 子供ってそんな簡単な事もわかんないんだからやんなっちゃう。 とっとと告れってば。 目に力入れて、オッケーなんだからってサイン送るようにしてる。 あーあ、早く気付いて次のステップに進みたいな。ガキって色々め、ん、ど、い。 「……その女さー……、すっげー…、俺が小学校の時会ったゆうれいに、感じが似てんの…」 「マジで、神母木。やっべー。後に憑いてんじゃ」 神母木は、昼休み、同級生の一言に母手作りのサンドイッチを喉に詰まらせて、身悶えたのであった。 |
>>>ゆり -- 06/05/08-00:24..No.[161] | |||
GW疲れかも知れません。 | |||