閉じた瞼裂けた喉


自分が気持ち悪い。

ぼーっとして、空を見上げる。
そこには青空が拡がっていて、酷く憤りを感じるくらいには晴れきっていていっそ寒々しい。
そんな折りにふとわき上がるこの感情が、嫌なのだ。
己が、他人を想うなんて!
ああだって、今までは他人なんて結局どうでもよくてああ確かに固定の人間に執着なんて事はあったけどそれはあくまで親愛や友情の類でこんな感情に包まれるなんてめったになくて。
初恋なんて薄ら寒いことは言わないけど、ああでもでも!
気持ち悪い。
だってこんな空を眺めて思い浮かぶのはあの顔だ。
あの顔なのだ、そうして。
堪らなく愛しいと想ってしまう。好きだと思う。曖昧じゃない、自覚したが最後だった。
愛してると叫びたくなる。
あの顔に向かって、叫んでしまいたい、触れたい、口付けしたい触れ合いたい触れて欲しいめちゃくちゃにしたいされたいいっそ壊してぐちゃぐちゃにし

気 持 ち 悪 い。

ふと正気に返って激しく自己嫌悪する。
己はこんな事を考えるような人間だったか?
答えは否だ。
そのくせに、たまに相手を忘れてすらいるのに、あの顔を目の前にしたら吐き出してしまいそうなこの感情が憎々しい。
ああ誰か助けてくれ、己で考えてるだけでもドツボだというのに。
思わず抱えた頭上に、ふと影が掛かる。
見上げるとそこには友人の顔があって、どうした、とか言っているからなんだか泣きたくなった。
思わず抱きついて、唇を噛む。
背に掛かる掌が温かくて、目尻が熱くなった。
どうした、と掛かる声があまりに優しいから、情けない声で相手の名を呼べば不思議そうに奴は首を傾げて名を呼び返してくる。
ああ困った。
吐き出し口の見あたらない、歪んだ渦がひたすらに身を焦がして、燻り続けている。

誰か助けてくれ!
(だって言えやしない、相手を目の前にして!)


end.




 >>>   -- 06/11/06-01:04..No.[178]  
    青い春って、微笑ましいですよね。


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