新年

 17歳か、なんて事をしみじみと感じた。
 正月が誕生日だというと大抵の人にめでたいといわれるけれども、実際自分がそうなってみると、あまりめでたくはなかった。
 年に一回の誕生日というイベントが、正月という日本での一大イベントに飲み込まれてしまう。
 お誕生日プレゼントはすべてお年玉に集約され。
「あけましておめでとうございます」の後に、ついでのようにして「あ、お誕生日おめでとう」と言われるのである。
 最早生まれてから毎年の事なのであまり気にはしていないが、この時期に家が忙しくなるのだけは少々恨みたい。
 近しい親戚や近所の人がこぞってやって来るし、去年の暮れに兄の子供が生まれたので、今年は普段は来ないような遠い親戚まで顔を見せに来る。
 赤ん坊の世話を義姉と母がしていて、接客は一番上の兄。雑用は一番下の自分だ。
 人数分のお茶を注ぎながら、目線は自然とどこか遠くの方を見てしまう。忙しい正月にも、あまり目立たない誕生日にもさして不満はない。
 けれど、誕生日に、彼と会えない事が、ひどく寂しかった。
 そう、一言でいい。お誕生日おめでとう、と。
 その一言が目を合わせて言ってもらえれば、自分はこの世界で一番幸せな人間になれるだろうに。
 年上の彼。
 いつまでも追いつけないと自覚しているから、自分が年をとるのは、嬉しい事であった。
 今年で17。来年はついに18になる。18に何が変わるというわけでもないだろうが、18歳は男が結婚できるようになる歳だ。
 男同士で結婚も何もないのかもしれないが、それでもやはり嬉しい。なんだか、大人の仲間入りをしたような気分になれる。
「来年か……」
 正月から来年の話をしているなんて、気がはやすぎるだろうか。
 初めて出会った時、彼は大人びた18歳だった。



 >>>とく   -- 08/01/07-00:15..No.[193]  
    とく…?


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