ガツン、という音が聞こえて目の前がチカチカすると、それは大抵どこかに頭をぶつけたのだという事を麦田は知っていた。 大丈夫かー、とか声をかけてくるクラスメイトに手をひらひらと振って、麦田はその高いというよりは長い身長を曲げて教室へと入る。 朝礼前の教室というのは、朝の光に包まれてどこか清清しく活気に溢れているようだ。 やおらぶつけた額に手をあててみると、赤いものがべったりとついていた。どうやら血のようである。 「麦田君ー、血垂れてるよー」 「…………そうみたいです」 遠くから様子を見守っていた宇佐美の言葉にどこか抜けた返事をして、麦田はポケットに手を入れる。 今時の男子高校生にしては珍しく、しっかりとアイロンのかかっている清潔なハンカチを取り出し額を抑えると、右隣からうわ、という声が上がった。 「痛そう、それ。またやったの大丈夫?」 自分の机に鞄を置いた小野寺は、麦田の様子を窺うように首を傾げると制服の上着を脱ぎ椅子の背もたれにかけた。 くりっとした瞳にふわふわさらさらの茶の髪。2メートルに届こうかという麦田から見ると、小野寺はとてもキュートに見える。 「あ、はい。すいません。入り口の所血ついちゃってるかもしれんです」 そんな事はどうでもいいよと笑った小野寺は、麦田を見上げた。 「先生来るまでまだ時間あるから、保健室いっといた方がいいんじゃない?」 しばし逡巡した麦田はしかし、はい、と素直に頷くと、ハンカチで額を抑えたまま廊下を歩き階段を2段飛ばして下りていく。 そうして、保健室前。 「………………」 保健室の扉に手をかけかかった麦田は、中からわずかに聞こえる話し声や物音にその動きを止めた。 ――そして、何かを察する。 最早この能力なくして、男子高校生は生き抜いてゆけまい。 かぁっ無条件に熱くなる顔を自覚しつつ、さらに出血がひどくなりそうだと彼は教室へと階段を登り出した。 「朝から健康的ですね……」 口から出るのはどこか物憂げな溜息。 しかし。 ポケットの中でブルブルと震えた携帯の存在。猫のキャラクターストラップを掴んで引っ張り出すと、メール送信者を表示する小窓にある人の名前。 「……」 ふわ、と表情が華やぎ、そんな、でかすぎる少年は3段飛ばしで階段を駆け上がっていく。 そんな彼らも、もうすぐ2年生だ。 |
>>>むぎp -- 07/02/26-23:46..No.[183] | |||
勝手にキャラ弄っちゃってすいませんです、妄想ですいませんです。消せ!ってあったら言ってください、消します。 えへ(何) |
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