夏の夢

あまりの暑さに目が覚める。
部屋の中は過ぎるほどに明るく、すでに日が高いことがわかる。
起きだして、台所兼居間へ行く。
出勤前の母が、前掛けをした祖母と、しゃべったり家事をしたりしている。
わたしに気がつき、休みだからといって寝坊はよくないとか言い出す。
それを流して、男どもはどうしたのかと聞く。
祖父は庭に、弟はもうでかけたという。
ふたりは楽しそうに、不平と愚痴と日々のことばをかわす。
テレビがつけたままになっている。
開け放した窓から、蝉の音がする。
日差しは強く、部屋全体に光が満ちている。

母のとなりにすわり、コップに手をかけ、ふと、「ちがう」と思う。
なみだがあふれる。
わけもわからずわめきだす。
狼狽した声に、何なの一体、と言われる。
庭から戻った祖父が驚く。
水がこぼれている。

そうして夢から覚める。
すでになく、戻らない、わたしの家族。



 >>>aoihi   -- 09/07/17-01:25..No.[200]  
    よい記憶のほうがつらいこともあります。
夏になると特にそう思います。


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