放課後の生徒会室。つい先日、急遽小花が担当していた体育祭ランダムシステムのプログラムの一部を引き継いだ蓮池は、パソコンに向かってキーボードを叩き続けていた。画面をずっと凝視していたお陰で、目の奥が鈍く重い。溜息を一つ吐いて小休憩を取る事にする。 「…良くもまぁ、こんなものを一人で何個も作ってたものね…」 ぼそりと蓮池は呟いた。この大変さは実際にやってみないと解らないだろう。本当に脳内が沸きそうになる。卓袱台をひっくり返したくなる。すぐ傍で小花を見ていた蓮池でさえ、正直ここまでとは思っていなかった。滅多な事では愚痴を零さない小花が「ランダムがーランダムがー…」と遠い目をしていたのも今は心底理解できる。もう少し手を入れるか、とパソコンに向きなおった所で、自室のようにノック無しでドアを開けて小花が生徒会室へと入ってきた。 「蓮池ー。ちと確認作業付き合ってもらっていい?」 ----------------------------------- 「え!?何これ!?」 校庭の特設会場で声を上げた蓮池は目を見開いた。そこには真新しい司会者二人の巨大パネルが設置されている。いや、パネルではなく巨大スクリーンだ。そこにコスプレした司会者二人が投影されていた。 「どうしたのこれ!?」 「ああ、今設置したんだ」 「アンタまだテコ入れしてたのー!?」 「そんでな、これが開会式の時だとすっと、第一レースでこの画像になる」 小花が待機席に設置されてあるテントの中で、モニターを確認しながら機材を動かす作業をすると、次々と競技のロゴがスクリーンに映し出された。 この男、どこまで。どこまで想像を超えていくんだろう。 本当に見ていて飽きない。 さっきまでの疲労がどこかへ飛んだかのように嬉々として眺めてしまう。投影を一通り確認した後、蓮池は声を弾ませた。 「凄いじゃない!これなら外から眺めるだけでも皆楽しめると思うわ!」 「そっか。ならいんだけどよ。…あと状況に表示するルールな。こんなもんでいいか?」 「ん、どれ?」 最終段階の一歩手前。計算方法や計算ファイル、ボーナス加算、校内放送の内容と台本とのタイミングなど一通りの確認を済ませ、二人は改めて校庭の特設会場を見渡した。 「もう明後日で終わりよね」 「終わる気がしねぇ…」 「終わるのよ、大丈夫。上手くいくわ」 入学してから数々のイベントを小花とこなしてきたが、不思議と今まで失敗するかどうか不安に陥った事は無かったし、失敗した事も無かった。そして蓮池は今回も「そう」だと信じている。 「最後まで気合入れてくぜー」 「おー♪……って、何かスタッフ二人だけみたいな気分…」 「裏方面子だからな。裏はマジで二人だ」 「…ま、そうよね。アタシこんだけ裏方少人数の大型イベント初めてだわ」 「司会も2、団長も2、裏も2。バディスタイルと呼べ。by海猿」 「…あー…!!」 もの凄く納得して蓮池は声を上げた。今までに無いくらいのフィット感。親友、悪友、腐れ縁、セット、コンビ、漫才夫婦…散々色々な呼ばれ方をしてきたが、どれもいまいちピンと来なかった。これだったか、と漸く納得出来る言葉に出会えた。自分の背中を預けられる相手。 「…そっか。アンタ、アタシのバディだったのね」 「おうよ」 二人の海猿が、二日後には大海原へと変わるその場所で笑った。 ※バディシステム(buddy system) ダイビングを行うに当たって、2名以上でお互いが相手側の安全を確認し合うシステムである。単独で潜水する場合に比べ、緊急時の対応が取りやすくなるという安全対策でもある。このシステムは、潜水以外にも多くの安全対策手段として用いられている。 安全確認を行うパートナーをバディと呼ぶ。 (ウィキペディア フリー百科辞典より) |
>>>体育祭推進委員会 -- 10/07/09-12:21..No.[206] | |||
体育祭、皆様楽しみにしててネ。 でも一番楽しみにしてるのはこの二人だと思いマス。 相変わらず実際の会話に肉付けしただけの捻りが無い話。 スンマセン…orz |
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