「おーい、しの………ってなんじゃこりゃー!?」 「………ノックしないでいきなり入ってくるな。馬鹿斎」 写真まみれの部屋で、凌は無表情に兄を見る。(たまたま休みだった)兄の斎(いつき)は、写真だらけで足の踏み場どころか床すら見えない部屋に絶叫した。ベッドの上さえ、写真でいっぱいだ。机だって椅子だって、もはや写真置き場と化している。狭い部屋の中、写真しか見えないような状態。 「お前なぁ!写真好きなのはいいけど、部屋の片付けもっとちゃんとしろよ!つーかマジこれ何!?」 「写真部用の小さなアルバム作ろうと思って、整理してたらこんなことに」 「しーのーぐー!お前は!掃除が!できねぇだろうが!」 地団駄を踏みながら一言一言叫ぶ斎に対して、凌は見事に無表情だ。はいはい、と聞き流して(斎の地団駄のせいで)ガサガサッと崩れた写真の山に視線を戻しながら口を開いた。 「……それで、何」 「……どーしてそういう性格になったかなぁ。まるっきり根暗じゃねぇか。昔は『にーちゃ、にーちゃ』ってどこいってもくっついてきた甘ったれがさー」 「……根暗じゃない。斎みたいにぎゃーぎゃーうるさくないだけ」 「うるさいって失礼な。にぎやかと言え。お兄様に対して失礼だろうが」 「誰がお兄様」 「俺だよ俺。俺俺。俺でーっす」 「怒るよ。斎」 「……へいへい、俺がわるぅございましたぁ」 弟の無表情の中に冷気をみた兄が、両手をあげて降参する。なんだかんだで、弟が可愛い(怖い)のだ。それから肩をすくめた。 「別に用っていう用でもねぇよ。とーさんが、もうすぐ飯作るって言ってたから、何か食いたいものあるか聞きにきただけ」 「……特にない。っつーかとーさんなら覚悟しなきゃ」 「まぁなぁ」 「………斎でも、覚悟は必要だけど」 「あ、なんだよそれー。お兄様の料理はまずいとでも言いたいわけか?」 「……言いたいんじゃなくて、言ってる。まずいって」 事実、父親と斎のつくった料理は、普通の人間の食べものではない。母親と凌は、食べなければ生きていけないので食べてきたから慣れたが、初めて食べた人間はもだえ死ぬだろう。 それを(一応)自覚してるのか、斎がすいっ、と目をそらした。 「……あ、そ。…で、これなに?」 斎が散乱している写真から一枚、拾い上げて聞いてきた。制服を着た男がでっかいパラソル使ってレースクィーンのポーズをとってる写真。 「……中久保だんちょー」 「誰だよそれ。つかだんちょーって?」 「体育祭。赤組のだんちょー」 「へぇええ。だんちょーねぇ。……コイツ、ノリいいのか?」 斎の質問に、凌は沈黙した。ノリがいいのか悪いのかの判断なんて、凌の担当範囲外だ。ただ。 「……要請があればやるっていってたから、今度犬耳と首輪つけて写真撮らせてっていったら、撮らせてくれた。まだ現像してないけど」 「ほー。そりゃ豪気な。つか、相変わらずなんだなぁ」 「……有海高校?」 「おう。俺がいたときも、女装コンテストなんてあったしな」 「……今もあるみたい」 「へぇ、まだ続いてンだ。あれ。……そだ。お前にアレやる。アレ」 「アレ?」 斎の顔がにんまりしたのに、凌は物凄く嫌な予感がした。斎がこんな顔をするときは、ろくなことがない。 ちょっと待ってろ、といって部屋を出て行った斎を見送り、凌は写真の整理を再開した。部活用に、小さなアルバムを作ろうと思ったのだ。だが、写真の量が多すぎて、整理に四苦八苦している。 「これは……ごめん。もう入らない」 キラキラした目で見つめてくる犬たちを見て、はぁあ、とため息をつきながらそれを脇によけた。もうかなりの枚数を入れてしまったので、残りが限られてくる。猫に比重を置きすぎた。だが、猫は妥協できない。 「おまたー。これこれ」 またノックなしにあけられた扉に凌が目をむけると、ばさり、と何かが覆いかぶさってきた。赤いそれを手に取って広げ、無表情にじーっと見つめる。 どうみても、チャイナドレスにしか見えなかった。 「……………何、これ」 「俺が一年のとき、女装コンテストでつかったチャイナ。凌はあのときの俺よか身長ねぇし、薄いし、似合うんじゃね?」 偽乳もいれてさー。くびれつくってさー。とにやにやしながら言う兄に、弟の怒りメーターがどんどんあがっていく。 「………俺が、着ると、思う?」 「なんだよ、着ねぇのか?せっかく兄からプレゼントしてやろーってのに」 「……有海高校を紹介してくれたことには、感謝してるけど」 「じゃーいいじゃん。あそこいったら、女装コンテストにはぜってぇ出ないと損だぜ?」 「損得じゃない。俺が、やると、思う?」 「やれってば!楽しいって!!!」 「てゆーか、今薄いって、言った?」 「気にすんな!なっ、着ろって!!」 弟の言うことなんてなんのその。げらげら笑いながらばしばし背中を叩いてくる兄に、弟は怒りを爆発させた。 ドッカン。 |
>>>朝倉pl -- 10/07/01-01:13..No.[205] | |||
すみません長文ですみません; ていうか中久保センパイ、無断で出してごめんなさい、ほんとうにすみません;だめだったら削除します!!!! 二鷹に(登録されてる)いる斎との、ある日の会話です。はい。 朝倉斎は数年前のOBでございます。 女装コンテストにもでました。このチャイナドレスで! 弟とは違い、表情豊かで感情も豊かでした。はい。だからノリノリでした。 ……やっぱりわたしは文章書きです。すみません。(まて) |
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