彼とその男は、ただ普通に話をしていただけ。 普通に話して、笑って、たまにボケとツッコミになり。 そして、ふとした瞬間にその時は訪れた。 「なぁ、キスしていい?」 「……へ?」 突然の言葉に驚く男の首に、彼は手をかける。ぐいっと引き寄せてから、唇を頬に落として呟いた。 「キスしてぇっつったの」 1トーン下がった声音が、男の耳をくすぐる。くすぐったそうに顔を背けると、男の耳が真っ赤になっていた。 「なんで、いきなり」 「なんとなく。キスすんのに理由が必要か?」 「そうじゃないけど……」 恥ずかしい、と言う男に、彼は喉を鳴らした。 「くくっ、お前って変なとこでシャイだよな」 「変なとこって」 遊ぶように頬に落ちる唇。だが、決して許可が降りるまでは唇に触れようとはしない。 どちらかというと彼が普段は頼ることが多い。なんにつけても。だからこそ、こういう時は男の意志を尊重したいと思う。甘やかして、甘えてほしいと思う。 その反面、たまに無茶苦茶にしてやりたい、とも思う。牙を突き立ててやりたい、と。 「別にいいけど…」 「さんきゅ」 くすっと笑ってから、唇に触れた。最初は軽く、フレンチキスを繰り返して。徐々に、深く。唇を吸って、後頭部にまわした手で頭を固定し、もっと、と求める。男の存在を確認するかのように。 「んっ……」 「……やば、勃ってきた」 「ちょ、やですよここじゃ」 「じゃぁホテルならいいのか?」 にやって笑うと、彼は男から離れ、頭をぽんぽんと叩いた。 「お前の嫌がることはしねぇよ」 キスご馳走様、といって、彼は立ち上がる。仕事いってくらぁ、と去る背中を見ながら、男は呟いた。 「ありがとう」 |
>>>朝倉ぽれ -- 11/02/05-13:30..No.[221] | |||
I will be always beside you. As long as you want me to do so. I will be always your side. As long as you want me to do so. |
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