不必要なセンチメンタル

考える。
言葉を投げかける、あてのない時は。

考えてみる。
自分の存在理由とか利用価値だとか、あいつの髪形の狙いはどこにある、だとか。
そう、ややこしい事ではなくて。

考える。
何かを必死に考えていくと、何となく眠いような気がしてきた。
もっと高尚な事の方が良いんだろうか?精神面な?的な?
誰かに見られるわけでもないのに頭の中でも見栄を張る。


もう、秋らしい。
らしい、というのはテレビで季節を押しつけるからだ。
ああ、あやパン辞めるんだ。お疲れさまでした。
なんて。俺が思っても。

そう言われれば思考を焼くような暑さがいつの間にか
身の回りから消えている。
涼しい。なんとなく。
季節に言われた通りに涼しさを感じている自分が好きだ。
と、思う我が身が可愛い。


アホか。



携帯はなんとなく鬱陶しい。
繋がっているというより、繋げられている感覚の方が、色が強い。
派手な色は目にうるさい。
うるさいという表現は的確だ。気に入った。
どこで使おう。

そういえばもうすぐ文化祭だ。
派手なポスターに陽気な文字を並べて
楽しそうな気配ばかりがにじむ。
そして、きっと楽しいのだろう。
だろう、と思った事をその場でしまう。
だって今は、話すあてがないから、こうして考えているだけの話。


まだ夏のような分厚い雲が、空で呑気に佇んでいる。
いや、隅のほうがだらしなく千切れ気味なのが、流石に秋か。
雨を降らせるほどでもないのに途中から黒いのが、
なんとなく半端で、面倒くさいような。
降るなら降れよ。降らなば。
いや知った事じゃないけれど。

誰だ、もう秋ですねだなんて言ったのは。テレビか。
テレビ好きだな、俺。
取り敢えずな衣替えをしたせいで、まだ暑い気がしている。
冬服を脱げば済む話。上着だけ?
何となくそういう事をするには、
自分のいるステージが違う気がする。
まさか私服とか。ないな。

久し振りに日の目を見た冬服は部屋の匂いごと連れて来た。
いやだな。
自分の家の事情までペラペラ締りなく知らせているようで
居心地が悪い。

そうだ、香水を付けている奴にすれ違った。たぶん、香水だ。
ああいうのは、ひとりで買いに行くのだろうか。聞きたい。
そういうやつは、きっとおしゃれな自分に慣れている。
普通だよ、当たり前だよ、だなんて言う。
この世界が海で隔たれている理由が何となく分かりそうだ。

海が見たい。とか、考えている自分を楽しむ。
行ったところで、だからどうしたって事になるのは、
行きもしない海よりはっきり見える。
だいたい海に行ったところで、海しか見えないじゃないか。
自分がもう一人いれば、海を見て佇んでいる自分。
を眺められるのに。

それはいやだな。きっと冷静に見ていたら、
大した事を考えてもいないくせに流木に腰かけ
海に向かっている図。
どうよ俺、今、佇んでいます。の図。

バカだ。
バカはいやだな。
バカに気付けないのはもっといやだ。
危なかった。


校舎の色が寒々しい。一日中、影になっているのだろうか、ここ。
ああ、だから雨が降ったら水が乾かないのか。
考えるのは別に楽しくはない。
考えないより暇がつぶせると思う程度だ。


考える。考えてみる時。考えれば。考えろ。

好意も悪意も似たような比重で心に圧し掛かる。
自分が向ける時には容赦がないくせ、
向けられたら大抵のやつが苦笑い。
あらがう術は今も昔もこれからもきっと、
ロクなものがみあたらない。
いつでもなくならないものなら、そのどちらかを選ぶべきだ。


まあいいか。
秋だから少し考えてみた。秋だから。
義務を果たしたような気がした。

飽きたから帰ろう。あやパンの後釜は誰になるんだろう。
後釜、という少し突き放したような残酷めいた言葉が気に入った。
どこで使おう。
いや、あやパンが可愛そうかな。いやいや、俺、どこ目線?



不必要なセンチメンタル。



 >>>2年PL   -- 10/10/02-11:19..No.[218]  
    そういえば衣替え。


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