一週間

五月二十一日
猫も杓子も恋をする。季節は春。
けれど僕には恋がない。
我と我が身を焼き尽くす、運命の出会いはあるのだろうか。
少なくともそれが母校にないことは、間違いのないこと。

五月二十二日
バス停でご一緒するあの女性が、長かった黒髪を切ってしまわれた。
信じられないことに、それは僕の胸を鋭く貫く事実だった。
あの女性の身に何か悪いことが起こったのでなければいいのだが。
夕食はいくら丼だった。

五月二十三日
朝、そっとお顔を窺えば、あの女性の悲しみが僕の胸にも伝わるようだった。
一体何があったのだろう。
声を掛けるのは失礼に当たるだろうか。
今夜は眠れない気がする。

五月二十四日
今日も声を掛けられなかった。
朝練のある僕と同じ時間に登校なさるのは、早めの登校である。
彼女は一体どんな部活動をなさっているのだろうか。
テニス?ラクロス?しとやかに弓道?
彼女を心配するはずが、つまらない空想に耽っている。
浅ましさを恥じ、今日は座禅です。

五月二十五日
日に日にあの女性のお顔が、落ち窪んで行くように思われる。
明日こそ声を掛けよう。
心配ばかりするのは、かえって彼女にとって良くない。
吾勝さんのお弁当が人らしくない味だった。

五月二十六日
あの女性は男だった。

五月二十七日
どんな夜にも朝は来る。
こんなに絶望していても、太陽は明るく、僕を照らしてくれている。
部活動に入っていて本当に良かった。
スポーツに打ち込んでいる間は、なにもかも忘れられる。
あの女性、あの人の優しい笑顔も、緑の黒髪も、繊細な指先も、なにもかも……

五月二十八日
猫も杓子も恋をする。
隣の家のジェニファーちゃんが、僕に懐いてくれている。
大きくなったら僕のお嫁さんになりたいそうだ。
そんなこと、いつまで言ってくれるだろうか。



七月十一日
ジェニファーは男だった。



 >>>倉田美浦   -- 04/05/19-16:25..No.[8]  
    また適当な仕事してます、アハハ!
ここまで読んでくださったあなたは、高屋敷貞ファンクラブ会員ですよMMM
(Mは貞マーク。怒り心頭!の貞をイメージしました)


[一覧へ戻る]

Pass
あっぷっぷ Ver0.57 Created by Tacky's Room