赤い月

とても仲の良いカップルが、海辺でデートをしている。
海の上にポッカリと満月が浮かんでいる。
それを眺めながら愛を語り合う二人。
そのうちに彼氏の方がちょっとした異変に気づく。

月が赤くなっていく。みるみるうちに。

それでその彼氏は考える。どうして月は赤くなっているのか。
そしてある結論を導き出した。

太陽が爆発したか、あるいは凄まじい燃え方をしているのだ、と。

それが月に映っている。と、いうことは今、おそらく地球の裏側は壊滅してしまっているはずだ。
そして今から十二時間後には、あの月を見ているこの場所も灼熱地獄になるのだろう。


昔読んだ、とある本の断片。
私の記憶はここで途絶える。
この後、この二人がどうしたか思い出せない。
単なる忘却というものかもしれないし、あるいはその先を読むのをやめてしまったのかもしれない。

いつも考えるのは、どっちが幸せだったかということだけ。

月が赤くなった理由を推察することができてしまったカップルと
まったく考えが及ばずに能天気に十二時間後を迎えたカップルと
どっちが幸せなんだろう?と。

終わりがあることを忘れてはならない。
先があるということに繋がることだから。

でも、なるべく赤い月は見ないようにする。

一人で何杯目かのグラスを空けながら、
空にポッカリと浮かぶいつもと変わらない月を見た。



 >>>匿。   -- 04/05/16-16:17..No.[6]  
    一人で暇だと何かしら思い出したり、考えてしまうことがあるのかな、と…(脱出準備)


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