その恋が始まったのは初夏で、蝉が鳴く頃にはもう終わっていた。日が長くなり始めたなと感じた頃に、オレは其処に“収容”されていた。 ○ 月○日 今日で此処にきて何日目だろう。白い壁とベット、そして棚があるだけのこの無機質な部屋。定期的に人が覗いては、監視の目を緩めずに去っていく。 オレはこっそりと持ち込んだノートパソコンにそれを書いていく。 ○ 月△日 何処から狂い始めたのか、解らない。ただ、タイセツなあの人、初めて信用しようとしたあの人に、別れを告げれられてからだったと思う。 叩き割った硝子で、手首を切り裂いた。医者からもらった薬を大量に飲んだ。 それだけで運ばれた、この白い部屋。 オレは一体何日いなければならないのだろう。 「渡瀬さん、具合は?」 「だいじょうぶでーす☆☆」 明るく笑顔でふるまってみせると、看護婦はそれに騙されてすぐに表情を崩した。 「それじゃぁお薬はいつも通りでいいわね。」 「はーい、それでいいですっvv」 そう言って看護婦は出ていく。部屋に、カギをかける事を忘れずに。 ○月□日 鉄格子のはまった窓から外を眺める。外出が許可されるのは、手首の抜糸が終わってからだろう。 右手の使えない(オレは左利きだから)不自由な手で、オレはこれを書いていく。 誰が書くのかも解らないこの日記モドキを。 誰かを信用するのって、難しい。オレはそう思う。 信用しようとすればするほど、その人間は遠ざかっていくからだ。 遠ざからないで、と相手の気に入る人間を装えば装う程、相手は去っていく。 オレは、どうしていいのか解らない。 解らない。 解らない。 ねぇスキってなんだっけ? 想い出せないよ。 日記はそしてぷっつりと終わっていた。 息子の遺品から見つけだしたこのファイルを、私は母親として一生涯PCにしまっておいて、眺めるだろう。 息子を失った私が攻めるのは自分だけで、同情を欲した時に自らを失うだろう。 |
>>>ナナシ -- 04/07/25-11:57..No.[18] | |||
死にネタ。うーみゅ、暗い・・・次回は明るくしマッスル★☆ | |||