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 何故、不況の今時とんと少なくなった二次会カラオケに男六人で来る羽目になったかというと、会社関係しか無いが、(自称)向井理の同期に当たる先輩の挙式と披露宴が明日行われ、そこで同僚の出席者として余興を一つ任される事になっていたのだ。
 内容については、喧々諤々山あり谷あり前途多難と言った風で、二転三転したが結局は新婦にリクエストを出して貰い、数年前では有るが『披露宴で歌って欲しい歌ベスト1』を取った某アイドルグループの曲に決まった。


「六人いらないんじゃないの?…五人だし。」
「抜け駆けは無しですよ。」

 曲が終了すると、尤もな意見をザル先輩が呟いてメガネが牽制する。
 確かに、一人を除いて全員が出来ることならパスしたいと考えていると思う。しかしそこですぐさま先輩に噛み付く早○具合が説教部屋行きの(略) 忘れたかメガネ、俺たちは最下層だ。


 曲が決まったまでは良いが、やる気のある人間は祝辞が有るから、二次会の幹事だから、脱ぐから(危険)とか諸々の事情で免除され、自薦でえらく乗り気な一人を除き、少人数はちょっと…じゃあ数を揃えましたという人数と面子で。部署は一緒なものの基本外回りが多い営業職、全員で顔を合わせるのも会議か歓送迎会くらいで、そうそう集まる事も出来ず、休日を潰す空気でもなく、大方の流れを決めたまま今日に至った。

 最初は流行の芸人のコスプレをして歌うとか、社内結婚という事もあり会社のロゴの入ったジャージで寸劇も入れたらどうかとか、死んでも取りたい案件の接待の席でも遠慮したい内容を(自称)向井(略)が挙げ、ザル先輩が悪乗りしたのを見て残り四人で宥め賺し、新郎新婦を巻き込んで普通に歌う事に収めた。そこまで電話とメールで一ヶ月以上掛かった。

 とりあえず、歌が決まり、無難にカラオケ状態で各自練習をしておくようにという方向に決まってそこから一ヶ月弱。数日前に(自称)(略)がまた騒ぎ出し、不幸な事にタイマンで話す事になった中山(仮名)さんが宥め、交換条件でパシリになったらしい。災難だ。


「…おい、おめえ、例のブツはちゃんと用意できたンだろうなァ。」
「もう式場の方へも話は通ってるんで、明日の朝あちらへ渡しますよ。」

 (自称)が中山(仮名)さんにのりのりで絡んで、普通に返されながらまた同じ曲をスタートさせた。そういえば中山(仮名)さんは、どことなく機嫌が悪そうである。いつもはもう少し空気になる位空気を読むタイプの筈だ。尤も、この部屋の中で上機嫌なのは一人しかいないが。そもそも何故人の披露宴で、ここまでテンションを高く保てるのかが分からない。


 ──例のブツは、なんの事は無いサプライズプレゼントで、新郎から新婦へ渡す物の事である。新郎が、さも自分が用意していたかのように渡すのに、有志の自分たちが自腹を切る。どうしてここまで身も心も金も尽くさなければいけないのか、と思うような理不尽な提案だったが、『全員跪いて胸に挿した花を新婦に捧げろ』と言う指令よりも、数千円のキャッシュの方がマシと言う結論であった。新婦に何ら含みは無いが、出席者ほとんどが会社関係者という状況で余計な恥は掻きたくなかった。
 心の安寧、プライスレス。なんかこれパワハラでは無いのかという気がしてきたが、そこの所どうなのか。

 それにしても(自称)のお前が新婦か、と言う様な入れ込み具合は異常だ。他の進行等に口出ししていないと良いが。

 姑のような同僚が原因で破談なんて気の毒だ。





 >>>長いです   -- 11/11/06-08:31..No.[232]  
   


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