9月10日(金)

見事に快晴の金曜日。
学校から帰って、速攻着替えて 出掛けようとした矢先だった。


「ちょっとちょっと、どこ行くのよ?」


階段を下りようとして 鉢合わせする。
相手の腕には さっき俺から奪い取ったぷー人形が抱かれていて。

「ソレはやんねーよ。」

緩く人形を指さしてビシっと前置きをしておく。
途端にヒザ蹴りが入ったが、この程度は日常茶飯事だ。



「今日、お母さんがケーキ買ってくるって」

「ふーん ちょっと行ってくっから。」


何気ない これだけの会話。
人の足下から頭のてっぺんまで くまなくジロジロと観察して クスリと笑う
そしてこの一言。



「・・・・彼女?」


「蝿痰チ!」



多分この反応でバレただろう。
俺が『脱・童貞』した時も パっと見一発で見抜いたのはこの人だ。
曰く 周りに漂う『オーラ』だか『香り』が違うそうで・・・


女って怖ぇ(素)
 

よくTVとかで 妻が夫の浮気を見抜くのとかやってるけど。
この男アホじゃねぇ?俺は絶対バレねぇぞ、って思ってバカにしてたけど。
なんとなく、今は解る気がする。


「アンタ、まさかその格好で行くとか言わないよね。」

「・・・?」


何でジト目で見られるのか解らずに、自分の格好を見下ろしてみる。
いつもの楽な服装 ユ○クロのシャツとRoad Ru○nerのジーパン
バックという物を持たない俺は、何でもかんでもポケットに入れて持ち歩くクセがある。
携帯と、財布と・・・うん、忘れモンは無ぇな。



「どっか変?」

隣に並ぶように立って まじまじ見られる視線に 多少不愉快さを感じながらも。


「ホントやめてよもー アタシがアンタの彼女だったら、一気に祝う気失せるわよ。」

狽アの人・・・いや、コイツは・・っ。


「ナオヒトの服、貸してあげよっか? 背丈的にちょっとデカいけど、それよりマシ。」


『ナオヒト』というのはコレの旦那で、俺の義理兄でもあるカッチョイイ人。
ア○キサンダーだか イブサン○ーランだか いっつもブランド物の服を着てる。
っつーか、半無理矢理着させられてる、気がする。


「俺があんなん着ても似合わねーよ; 逆にそっちの方が退かれるっつの・・。」


自分で言ってて少しだけ悲しくなった。
ブランドには興味無ぇけど、やっぱそういうの似合うヤツってカッコイイと思う。


「せめてその頭どうにかしなさいよね・・伸ばしっぱの寝起きっぱ。」


似合わない、の言葉で素直に納得しやがったのがスッゲェムカツくけど。
頭なんてどうしろっつーんだ 女みたいに縛ったり、パーマ掛けたりするワケじゃなし。
ワックスとか、ベタベタして嫌なんだよ っつかいちいちメンドい。


「うっせーなー もう行くから。」




顔を合わせれば小言ばっかりのうるせぇヤツ。
放っとけ。
脇をすり抜けて階段を下りようと手すりに手を掛けた俺の背中に しつこく声が追ってくる。


「あ、ねェ ねェっ。」

「うっせーっつの!」


掴まれた腕を見て 無意識に眉が寄り 眉間にシワが出来る。
もー勘弁してくれ。
何なんだよ、と思いながら仕方なく振り返ったその時。
ジーパンのポケットに何やら突っ込まれた感。  ・・あ?


「今日アンタが帰って来なかったら・・・ケーキ、アタシが食っていいわよね。」

「・・・・・・。」


意味深な微笑を浮かべて見上げられ 一瞬 素で「勝手にどうぞ」と言い掛けた、が。
何を言いたかったのか 数秒後に気が付いた。
何を突っ込まれたのかも 大体察しが付いた。


「・・・〜〜〜勝手に食え!!!」






先輩に貰った割引券と、ポケットの中の 薄っぺらい小さな袋。
それが今日の 俺のお守りだ。





Happy Birthday  17歳の俺。





っつかどーなの コレ。



 >>>匿名   -- 04/09/10-22:19..No.[35]  
    匿名にする意味も無く、解る人には丸分かりです。
すいません、自己満足な作品で・・・(苦笑)


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