髪を伸ばしていたのには理由がある。 大切な人を忘れないための。 自分の好きな人をいつまでも覚えていたかった。 もう一つ理由がある。 願掛け。 もう一度、大切な人ができればいいと。 好きだった人は忘れないけど、でもそれを乗り越えて好きな人ができればいいと思った。 「いつも悪いな」 「いや、別に。家のことだし」 親との何気ない会話。 いつもの日常。 おきて。支度を整えて。 学校に行って。ばかをやって。 帰ってきて。仕事を手伝って。 勉強して、寝る。 だけど、その中に天使が舞い降りた。 柳が15歳。中三の頃のこと。 受験シーズンに転校してきた子がいた。 名前は、ライラ。 イギリスからの留学生。 とても綺麗な金髪の長い髪をなびかせて教室に入ってきた彼女の姿は、いまでも忘れられない。 「イギリスから来た、ライラ・ルーヴェルです。よろしくお願いします」 流暢な日本語で彼女はそういった。 まるで鈴のような、可愛い綺麗な声。 一目ぼれだった。 ライラとはすぐに仲良くなった。 だが、彼女はいつもどこかしら具合が悪くて。 不健康なのよ、と冗談っぽく言うのだが、それが冗談に聞こえなくて。 衝撃をうけたのは、それから半年後。 受験のために夏休みをつぶした柳は、二学期になって登校したとき、彼女の姿が見えないのを不思議に思った。 担任がSHRで、こういった。 「ルーヴェルは夏休み中に体調を崩して入院している。だから、皆、機会があったら見舞いにいってやってくれ」 うそだ、とおもった。 だけど、聞いた病院にいったらほんとうにいて。 嘘のようにやつれている彼女を見て、やりきれなかった。 彼女の両親と医者の話を、たまたま聞いてしまったから。 ……彼女の病気は治らない。 思いは打ち明けなかった。 困らせたくなかった。 自分が耐え切れなかった。 自分勝手なことばかり考えていた。 彼女は3ヵ月後に息を引き取る。 そのとき、彼女の両親から託された、クラスメートへの手紙。 柳宛の手紙には、隅っこのほうに小さく綴られた言葉があった。 「柳くんのことが好きでした。言いたかったけど、私は死んでしまうから。ごめんなさい。最後に思い出をくれて、ありがとう」 その手紙をよんで、涙が出た。 ああ、自分はなんて取り返しのつかないことをしてしまったのだろう。 思いを伝えていればよかったのか。 そうすれば……彼女はもう少し幸せでいられたのだろうか。 髪を伸ばしていたのには理由がある。 大切な人を忘れないための。 自分の好きな人をいつまでも覚えていたかった。 もう一つ理由がある。 願掛け。 もう一度、大切な人ができればいいと。 好きだった人は忘れないけど、でもそれを乗り越えて好きな人ができればいいと思った。 でももう、あの時以上の恋はできないだろう。 彼女は、心の中にまだいるのだから。 彼女を忘れたくないのだから。 …もし、それを全部包み込んでくれる人がいたら……。 そのときは、俺はその人の手を離さない。絶対に。 |
>>>河瀬PL -- 04/11/22-01:38..No.[43] | |||
つかさん、かいたぜ!!…ちくしょー。シリアスだ。駄文だ。ごめんなさい。(逃げ) | |||