けだるい朝

冷たい風を感じて腕を付いて僅かに布団から頭をあげる。

昔ながらの日本家屋、手頃な値段の割に、静かな環境と広い部屋と庭
につられて契約したものの、薪焚きの風呂と土間には少し困っている。

ある程度は改造していると言われても、電気が来ているというだけで、
囲炉裏すら残っている家はすきま風が厳しい。



そろそろこたつを出すべきだろうかと、ふと思う。

奥の寝室は隣の部屋に置いた本の山のおかげかなかなか暮らしやす
いので、玄関へと向かう度に思っては忘れてしまう。

ほとんど外食で、風呂も外ですませてしまって、家は寝る為にしか使っ
ていないからそう思うのかもしれない。

外の音もほとんど聞こえない部屋の中で机へと座り、本を読んでいる
と、誰もいないような気すらしてくる。



家が古いせいではなく、人に煩わされたくなくて誰にも教えていない家
には訊ねてくる人もなく、休みには庭を整理して、平日はゆっくりと本を
読む。

二鷹の外れに時代の流れに置き忘れられたようにぽつんと建つ、虫の
声すら聞こえる。異界。

そこは、大切な安らぎの場所。





「………………」

半身を起こして、枕元に置いていた眼鏡をかける。

白襦袢のはだけた胸元から見える跡が生々しく、腰が怠くて痛い……

執拗に嬲られた場所はじんじんと鈍い痺れを感じさせている。

今日は休みだからいいものの、明日の仕事は辛いだろうなとぼんやりと
思う。





誰にも教えていない家に最初に泊めたのが私を辱めた人だという事実
に苦笑が浮かんだ。

古い家の造りや、囲炉裏や、薪で沸かすこともできる槇で出来た木の風
呂。古いだけのそれに妙に喜んでいたのが、ぼんやりと思い出されて。

「変な人ですね」

呆れた口調で話しかける。

薄く開かれる瞳をぼんやりと眺めていると、延びてきた腕に布団の中へ
と引きずりこまれる。

「ぁ、……嫌……」

身体を緊張に強ばらせるものの、目覚めてはいないのか、抱き寄せら
れるだけで何かされるようすはない。

仕方なく笑うと、年の割にずいぶんがっしりとした肩へと顔を埋めて……





静かに眠りへと落ちた。



 >>>瀬神L   -- 04/10/25-21:33..No.[41]  
    いろいろ危ない描写は見ないふりをして下さると嬉しいです(笑)
雄介さんに……あ、いえ……止めておきます……


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