会話

 カチャリ。
 台所で二人分のティーセットを広げて、そこに熱い紅茶を注ぐ。
 物がないから、やたらと広いリビングのソファーに、兄さんは座っている。
 久しぶりに会った兄弟なら、普通はもっと積もる話とやらをするのだろうか?
 大概、僕らの場合は、こんな感じだ。
 紅茶で満たされたカップを盆に乗せ、彼の前に並べた。

「ああ。有り難う。」

「どういたしまして。」

 互いに小さく微笑むだけ。
 兄さんが口をつけるのを確認してから、自分も一口飲んだ。

「美味いな。やっぱり、お前のいれたのは。」

「褒めても何にもでないよ。」

 僕はふふっと笑った。
 彼は、カップを置いて、僕を見た。

「・・・・・・最近、笑顔が優しくなったな。」

 少し驚いたように、嬉しそうに言った。

「そうかな?自覚ないけど。」

 僕は首を傾げてそう答える。

「なった。お前は昔から、笑っても何処か悲しそうだったから・・・」


 暫く、会話は止まった。
 思わず俯いてしまった。頭の中に記憶と言葉が凄い速さで廻ってゆく。
 僕は何と言えばいいのか、思いつかなかった。そんな風に見えたんだろうか・・・・自分は。
 確かに、僕は空疎だった。それが不安で・・・・・・・・・

 
 
「・・・・・・・・・僕は、今。幸せだと思ってるよ。」

 下を見つめたまま、言った。
 力が入りすぎて、声が擦れた。

 兄さんは、微かに瞳を開いた。

「・・・・・・・そうか。」

 彼は、優しく笑った。まるで、自分も幸せだという風に。

「うん。」

 頬が熱い。息が苦しい。手に力がこもる。
 何故だろう。泣きそうな気分になった。
 悲しいわけではない。
 とても、嬉しくて。
 幸せを感じる。強い愛しさを。
 神に感謝したいと思うのは、こんな時なんだろうか?

 




 「そろそろ、時間だね。」

 「そうだな。じゃあ、また来るよ。」

 兄さんの手が、くしゃりと僕の頭を撫でた。
 何だか温かくて、少し恥ずかしいような気持ちになって、僕は肩を竦め、目を細めて笑った。



 >>>匿名。   -- 05/01/30-17:34..No.[75]  
    ほのぼの〜。仲良し、青柳兄弟です。


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