SAY GOOD BYE







だから僕はこの寒空の下で、
温もりと君を待ちわびている




















「知らなかった?」

不意に投げかけられた視線には、嘲りよりもあわれむ方が強く滲んだ。
誰よりも君が好きだった。それを伝えきれている自信があった。
けれども言葉に変えればその言葉を乗り越えようと溢れて来る
感情に振り回されて、ただ闇雲に抱き締めるだけで精一杯だった。




塗りたくったように白い空が、猛進する群れのように
忙しなく動き続けて、風向きを指し示す。




愛という言葉を取り交わした試しはないけれど、
それが恋という存在をより一層深く刻み込んでいると気付いた。



放たれた言葉を
反らされた横顔を
広がり続ける距離を
いつかは見た事のある景色が
目下にただ、漠然と広がっているかのように、
自分の身に近い出来事にも思われなくて











受け容れられるほど器用に、
君を好きになったわけではないという事に、
無様に取り乱して、名前を叫び散らしても、
時間を過ごす毎に勢いを増して空気を擦り、叫びにも似た音を
轟かす風の音が打ち伏す最中で確かめた。






吹き抜けて通り過ぎた風が服をあわただしくはためかせて、
晒された二対の耳が、扱かれてうっすらと赤味を帯びた。









時に女よりも明らかな女々しさを隠し持つ男たちは
諦めるという潔さを維持する余裕をなくしてしまう。

















だから今でも僕はまだ

この寒空の下で
温もりと君を待ちわびている。














 >>>   -- 05/02/03-22:09..No.[79]  
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