好みは人それぞれ

これは、ある真夏の休日のちょっと普通でない家庭の団欒。

ガサリ。

コンビニのビニール袋が音を立てて、テーブルの上に置かれた。
オレンジ、黒、緑…様々な色が透けて見える。
袋に絡んでいた細い指が離れ、彼は階段の方へと素足で歩く。

「父さん!買って来たよー!休憩しようっ!」

高めの声が二階に向かって響いた。
どこかのドアが開く音がする。そして…

「はーい。今行くよ〜」

と彼よりかは低い、けれど男性としては少し高いくらいの声が返って来た。
返事を確認すると彼は「ん。」と頷き、リビングの先ほどのテーブルの前まで戻った。
そして、自分の定位置の椅子を引くとそこに座り、早速袋の中身を取り出した。
コップを出す為に立ち上がろうとすると、タイミング良く彼の前に清潔なグラスが三つ現れた。

「はい。…暑い中ご苦労様。」

爽やかの見本のような笑顔を浮かべて、男は彼を労う。

「…ありがとう。」

彼も無邪気な…どこか子供の色の抜けない笑顔で返す。

三種のペットボトルを開け、そのグラス達にそれぞれ注ぐ。
だが…最後の一つだけがなかなか出てこない…。
ぼとっと音を立てて、オレンジ色の物体がグラスに落ちた…。
しかもそれは、シュワッと何か機体を発生させる…。

「…それは…何?」

声こそ平静を装っているが…爽やかの見本の笑顔は若干引きつった。

「え?…これ?」

「そう。…また新製品かな?」

その引きつりに気づかず彼はにっこりと頷く…。

「うん。そうっ。えっとね『ぷるるん夏蜜柑ゼリー電撃サイダー』っていうの。何か、夏蜜柑の甘酸っぱくて少し苦味のある味のゼリー飲料でね?ぴりっと辛いようなサイダーが刺激的なんだって!」

「……そ、そう…。」

嬉々として説明する彼に、何を言うことも出来ず、男の顔は更に引きつった…。

「…??どうかしたの??」

やっとその表情の変化に気づき彼は不思議そうに小首を傾げ、瞬きを繰り返す。

「いや…何でもないよ………。そうだ、今スイカを切るから…待っててね。」

そう告げると、男はキッチンに逃れた。
相変わらず、『?』マークを頭上にいくつも浮かべながら彼は、自分のグラスへとその得体の知れない新商品を注ぐ…というか落とす。



「……どうしたの?」

先ほど二階で返事をした彼の父親がリビングへと登場…。

そして、また同じやりとりが繰り返される。



好みは人それぞれ。

他人に強制さえしなければ…

本人が良ければ…きっとそれで良いのだろう。







 >>>匿名   -- 05/08/01-18:02..No.[131]  
    とあるPCの奇妙な好みのお話。
お食事中、前後の方…失礼しました。
PLが新商品に弱いだけです…ごめんなさい。


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