ひたひた

好きなものに、触れてみる。

指先に、一つ。好きなものを捉えて。

内側から、一つ。嫌いなものが生まれる。


それは、きっと。

思い知るという、行為。


*********************************************


何時もより、雨音が耳に響くのは。

濡れたアスファルトの所為でもなければ、

道を行く人々の、一本三百円のビニール傘の所為でもない。

今、自分が誰の背も追わずに歩いているからだ。と、思う。


「……寂しくなるけれど、好き。」

少し後ろを歩む足取りの、隣へと並び、

「雨。」

言って、傘の下から覗き見る。



不思議と、雨の音は気にならなくなっていた。


それから何度となく、雨は降ったけれど

触れるたび、棘が増えていったサボテンと

君が居た時よりも響く雨音と



今も、君を待つ。



 >>>匿名。   -- 05/10/12-18:13..No.[143]  
   


[一覧へ戻る]

Pass
あっぷっぷ Ver0.57 Created by Tacky's Room